第2部座談会
「日食と文化」趣 旨
長い進化の過程で人類はさまざまな文明を育み、哲学を形づくってきました。自然の中で自然と調和しながら生きてきた人類にとって「天界」で起こる現象は地震や雷のように直接的に影響を及ぼすものではなくても、重要な意味を持っていたことでしょう。なかでも太陽が何物かに蝕まれる「日食」は、なんとも不気味なものであったに違いありません。皆既日食ともなると、不気味の範疇では収まらず、畏敬の念も通り越えて「恐怖」だったろうと思います。
昔の人がどのように日食を感じていたのか、天文とは少し離れた分野で取り上げられた例を見ると興味深いものがあります。
今回のパネルディスカッションでは、日食や天界の現象が人間の文化や物の考え方(哲学と言って良いと思います)にどのような影響を与えてきたのか、三名のパネリストの方々と探ってみたいと思います。
パ ネ リ ス ト
武部 俊一
(日本科学技術ジャーナリスト会議会長)
1938年大阪市生まれ。1961年東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学コース)卒業。同年朝日新聞社に入り、科学部長、論説委員などを経て2001年からフリーランス。日本科学技術ジャーナリスト会議会長。科学・技術と社会とのかかわりに関心をもつ。興味の対象は、モーツァルト、レオナルド、異星人、ワイン。 著書は『タイムマシン夢書房』(朝日ソノラマ)、『皆既日食』(朝日新聞出版)、『人工衛星図鑑』(朝日新聞出版)など。
北尾 浩一
(星の伝承研究室)
1953年兵庫県に生まれる。群馬大学卒業。大阪教育大学大学院教育学研究科修了。星の伝承研究室主宰。1978年より星 の伝承の調査を開始。小惑星7954に「Kitao」 が命名されている。東亜天文学会会員。日本民俗学会会員。日本社会教育学会会員。著書に『星を見よう』(ごま書房)、『星と生きる 天文 民俗学の試み』(ウインかもがわ出版)、『Star Lore of Japan: The Starscape of a People』(Amariver社)、 『天文民俗学序説』(学術出版会)などがある。
金井 三男
(元天文博物館五島プラネタリウム解説員)
1946年東京神田生まれ。1969年東京学芸大学卒。5年間の高校理科教員を経て1974年(財)五島プラネタリウム就職。1989年(株)東急コミュニティー入社。2011年退職までプラネタリウム業務運営受託・解説員養成に従事。首都圏11カ所のカルチャーセンターで天文学講座を開講、普及活動を続ける。小惑星9866に「Kanaimitsuo」が命名されている。食変光星アルゴル極小観測回数389、他47年間多数の変光星を観測。「まんがで読む星のギリシャ神話」「金井三男のこだわり天文楽」いずれもアストロアーツ社刊各種雑誌に記事連載。
司 会・座 長
田部 一志
(日本スペースガード協会理事)
1956年鹿児島県生まれ。明治大学工学部卒業。プラネタリウムメーカーを経て株式会社リブラを設立、同社代表取締役。1975年以来木星の観測を続ける。木星スケッチデジタル化プロジェクト主宰、木星閃光現象の観測プロジェクトを始動。小惑星7717に「Tabeisshi」が命名されている。東亜天文学会マゼラン賞受賞。日本スペースガード協会理事、国際科学映像祭運営委員、日本スペースガード協会理事、月惑星研究会会員・幹事、日本天文学会会員、国際プラネタリウム協会(IPS)会員、JPAデジタルプラネタリウムワーキンググループ代表世話人。著書に「アマチュアのための太陽系天文学」(共著:シュプリンガー)、「天体観測の教科書:惑星観測編」(共著:誠文堂新光社)。趣味は1930年代のジャズ鑑賞と木星。