木星に衝突した天体の記録をまとめてみました。
有名な天文学者カッシーニの木星観測記録の中に衝突痕跡と思われる模様の出現とその変化があります。
筆者等によるPASJの論文(PDF)です。
パリ天文台のSuzanne Debarbatさんによる論文 です。ボイジャーが撮影した火球である。衝突痕跡は残らなかった。
A fireball in Jupiter's atmosphere
Cook, A. F.; Duxbury, T. C.
Journal of Geophysical Research, vol. 86, Sept. 30, 1981, p. 8815-8817.
Abstract
One fireball was photographed during two encounters with Jupiter. Its total luminosity was 120,000 0 mag s (at standard range 100 km).
If the luminous efficiency proposed by Cook et al. (1981) for slip flow of a meteoroid in its own vapors is employed, an estimated mass
of 11 kg is obtained. A rough absolute magnitude is -12.5. If it is noted that the search was conducted for a total of 223 s during two
exposures, a number density near Jupiter of 10 to the -28th/cu cm is estimated for masses of meteoroids of 3 kg and greater.
This value is about a factor of six smaller than a rough upper limit reached from an extrapolation from terrestrial observations of
meteors and comets.
衝突の時刻:1979年3月5日17時45分頃
明るさ:-12.5等級(100kmの絶対光度)
衝突地点:W30°N50°
ハッブル宇宙望遠鏡による連続写真です。
BAAのJohn H. Rogersによる報告論文3編、 PDF1 , PDF2 , PDF3 です。
ハッブル宇宙望遠鏡による写真です。
ハッブル宇宙望遠鏡による連続写真です。
Astrophysical Journalに2本の論文が発表されています。
Anthony Wesley氏(オーストラリア)による動画です。
Anthony Wesley氏(オーストラリア)による観測報告です。
Christopher Go氏(フィリピン・セブ島)による動画です。
何かが木星面で光ったことは確かです。衝突痕跡は残らなかったことから、1979年のイベントに
似た現象であったことが伺えます。
タカハシTOA-150 f1100mm テレビューパワーメイトX5
Philips Toucam Pro2
露出時間 60sec 901フレーム
撮影日時 2010年08月21日 AM 03h22m12s
熊本市花立2丁目
観測地:東京都世田谷区
望遠鏡:Celestron C9・1/4 ToUcamProU 15fps 1/25sec 1200Frames
(観測者のコメント)
閃光現象は3:21:24(JST)の撮影開始から469コマ目から490コマ目でした。
1秒間に15枚の撮影枚数ですから、その時間を換算すると私の記録では
ちょっと自信はありませんが3:21:55:26−3:21:56:66(JST)となりました。
上の画像はその閃光時間のうち比較的はっきり写っている20枚をコンポジット
したものです。ノイズが若干減りました。動画も折を見て記事をアップする予定です。
撮影地: 富山県富山市
撮影機材: BORG 125SD(f750mm)、Kasai HC Or 7mm
DFK21AU04による拡大撮影
コーデック: AVI、Huffyuv v2.1.1
(観測者のコメント)
シャッタースピード1/30秒、30fpsにて8/21 03:20:33より120秒間
3600フレーム撮影し、2717フレーム付近で発光現象が確認されました。
立川さんの撮影地熊本市とは離れていますので、補助的な判断材料に
なるのではないかと思います。
去る6月3日年のイベントに似た現象であったことが伺えます。
理屈ではあるだろうと思われていたが、予想もしなかった真っ黒な衝突痕跡が出現し、その異様な光景はこの世の終わりをも想起
させるものであった。しかしそのような現象は1000年に一度程度の出来事であろうと思われていたが、1690年にも似たような
現象が起こったことが明らかになり、さらに一時的ではあっても彗星が木星に捉えられていたような出来事も明らかになると、
もう少し短い間隔で起こっても不思議ではないなあと思われるようになった。
期待にたがわず、2009年7月23日には、正体不明の天体(1690年の時のような単一の天体)が衝突したことが、痕跡から
判明した。
一方、1979年3月5日、接近していたボイジャー1号は木星の夜の側に明るい火球を観測した。流星の世界で用いられる絶対等級
(100kmの距離に換算した明るさ)でマイナス12.5等もあった。これを地球から見えたと換算すると、5−6等級となり、
衛星に比肩する明るさで一瞬光ったように見えた筈である。しかしながら、この火球は一切の痕跡を残さなかった。ある程度の大きさに
到達しない場合は、痕跡を残さない。SL-9の衝突核の中にも痕跡を残さなかった物もあった。
2010年の6月3日のイベントも8月20日のイベントも痕跡は残っていない。ビデオを見る限り、衛星よりやや暗い感じに写って
いるので、1979年のイベントよりやや規模が小さかったと見ることができる。
痕跡を残すほどの天体が木星にぶつかる確率は1000年に一度だが、もっと小さな天体、例えば1/10の大きさのものは100年に
一度、100分の一のものは10年に一度、1/1000の一のものは毎年ぶつかっているのかも知れない。1979年のものが3kg
なので、つじつまは合う。